松崎マイケル・ナイマン

「パパ。ただいま」
「おお、帰ってきたか。練習、遅かったな」
「うん」
「どうしたんだ。怖い顔して」
「パパ、僕の名前の由来って何だっけ?」
「何度も言ってるだろ。ハーフっぽくて格好いいから、マイケル・ナイマンにしたって。ほら、ミドルネームもあるし」
「嘘だ! マイケル・ナイマンって、作曲家の名前なんでしょ?」
「お、おまえ。どうして、それを」
「今日、音楽の先生に言われたんだ」
「そうか」
「どうしてくれるんだよ。パパは僕を作曲家にしたかったわけ? 僕ピアノだって弾けないし、ただの野球少年じゃないか。野球部のみんなに、恥ずかしくて言えないよ」
「すまない。実はそうなんだ。俺はおまえを作曲家にしたくて、2歳の時にピアノを習わせようとしたけど、おまえは断固拒否した。それであきらめていたんだ。まさか野球少年になるなんて思わなかった」
「僕だって、自分の名前をハーフっぽくて格好いいって思ってたのに。甲子園に行ったら、ダルビッシュみたいだって騒がれると思ったのに。まさか作曲家だなんて」
「すまない。うっうっ。俺はバカだ。バカな父親だ。許してくれ」
「お父さん・・・。僕も言い過ぎたよ。泣かないでよ。子供が親に土下座するもんじゃないよ」
「いいのか」
「ああ。この名前でしばらく頑張ってみるよ。マイケル・ナイマンと言えば、松崎マイケル・ナイマンだと言われるくらいの野球選手になってやる!」
「マ、マイケル・ナイマン。さすがうちの息子だ。よし、父さん、本まぐろ買ってきてやるから、今日は景気よく家で鉄火丼でも食べるか!」
「やったー! 鉄火丼!」