2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ポコリがあればいいじゃないか

毎月1日、ポコリが新製品を発表する。これは僕にとっての紛れもない生き甲斐だった。 僕は月の前半半分は発表されたポコリの新製品の余韻に浸って過ごす。そして月の半分を過ぎると、来月1日に発売されるポコリの新製品を楽しみに生きる。 それ以外、僕には…

トゥナイト、キスがまぶしくて

湾岸通り沿いにレクサスを走らせていると、ラジオでサザンがかかる。陽子はサザンが好きだった。サザンの歌を聴いていると、図書館で働いていた20代の頃を思い出す。あの頃は恋とか愛とかがどういうものなのか全然わかっていなかった。 陽子が渋谷に到着した…

快速電車あさぎ

来た。来た来た。柳本港晴の頭の中に、電車の汽笛音と走行音がこだまする。会議の進行状況はすっかり滞っており、そろそろ現れるのではないかと思っていたその矢先だ。柳本は会議を進行する尾崎の背後に近づき、耳元で何かささやいた。尾崎はきょとんとした…

ポケラジン

「おまえはポケラ人だからなあ…」 担任教師のイトカワの言葉を聞いて、僕は耳を疑った。指導者がそのようなことを言うようになったらこの国は終わりだ。 イトカワの言葉に賛同したクラスメイトたちが僕に筆箱を投げつける。「ポケラ人! ポケラ人!」といっ…

ジェンセンが本木の新譜を絶賛!

ジェンセン真田が初めて本木一太郎の作った音楽を絶賛したことが話題になっている。 ジェンセン真田はストリートミュージシャンとして20年以上活動し、コンサートの開催を告知すると2000人が集まるという人気者。それとは対照的に本木一太郎は塾講師と果物屋…

塵も積もれば愛となる

今日はいい塵を見つけた。形といい、柔らかさといい、小ささといい、この上ないほどにベストな塵だった。昨日見つけた塵は妙な色かたちをしていたから、僕はとても幸せな気持ちになった。明日が来るのが楽しみだ。 たかが塵、されど塵である。塵なんてそこら…

コバンザメなめんなよ

トコスコキマロン社に転職して1週間が過ぎた。いま俺はこの会社の中で誰が一番力を持っているのかを見極めている。候補は3人いる。声が大きいが言っていることは全然面白くない長瀬と、いつもムスッと黙り込み周りから気を遣われている田代、全ての人に愛…

胃蚊垂と絵下垂

大阪でひとりの少女が、ある言い間違いを元にいじめられていた。 「おまえって体型が胃下垂だよな」 「え? 私、胃の中に蚊なんていないよ」 「は? もしかしたらおまえ、胃下垂って蚊のことだと思ってるんじゃないだろうな」 「胃に蚊が入ってしまうから胃…

舌打ちマシンガン

「んつぇつぇつぇつぇつぇつぇつぇつぇつぇ!」 どこからともなく舌打ちの連射の音が聞こえてきて、半蔵門線に乗っている乗客たちは身体に緊張を走らせた。 舌打ちマシンガン。 そう呼ばれる男は毎朝ラッシュ時に半蔵門線の青山一丁目駅から乗り込み、京橋駅…

しあわせ大魔王

僕は今日、自分自身を“しあわせ大魔王”に認定した。世間には可愛い彼女がいたり、年収何百万円ももらっている奴もいるが、僕よりも幸せな奴はおそらくいないだろう。よって、僕がこの地球上で唯一無二のしあわせ大魔王として君臨することになるのだ。 浮かれ…

くずれそうな建物

雨があがり、虹が空にかかる。三森幸三はそれを機にレモンティーを淹れることを決める。マグカップを取り出すと天井からパラパラと埃や砂が落ちてくる。幸三は気にせずに、砂埃入りのレモンティーを飲む。 幸三がこの建物に暮らすようになって2年が過ぎた。…

四行しか書かなかった男

私は、文学研究者として後世のためにぜひとも彼のことを記しておかなくてはならない。みなさんはあの永津淳平を覚えているだろうか。 永津淳平は、永津静雄と久保政子という2人の天才小説家の間に生まれたひとり息子である。両親が共に文学史を変えるほどの…

それって何か違わない?

小学校の教師を25年続けてきてわかったことがある。子供たちを最も萎縮させ、私の言いなりにする魔法の言葉だ。それは、「それって何か違わない?」である。私が子供たちに向かってこの言葉を言うと、どんなに品行方正な生徒でも、自分が何か間違えたことを…

7代目パン屋のジャルカミレの法則

今年の10月1日から父の後を継いでパン屋の店長となった。父から店の名前を変えるか?と聞かれたので、今風の「エトワール」という名前にした。父の代までは「星村パン屋」という古臭い名前だったので、あえて「星」をフランス語訳にしてみたのだ。すると、狙…

小心者マニア

男を選ぶなら小心者がいい。 小心者のあのオドオドと周りを伺うような卑屈なしぐさ。小心者がかもし出す閉鎖的な空気。小心者が社交的な人の足を一生懸命引っ張って自分の居心地のいい空間を作り出そうとする涙ぐましいまでの努力。 私はそれらの小心者特有…

マコトとクーのパー

海にはどんな願い事も叶えてくれるワズディンという神様がいる。西武と巨人に在籍したあのジョン・ワズディンとは違う。ワズディンは気まぐれなことで有名で、何年も現れないこともあれば、毎日のように泳ぎ回りその姿を目撃されることもある。願い事がある…

鉄棒伝説

こないだ私が友達と3人でお茶していると、彼氏のトホホ話を自慢しようと言うことになった。潮美の彼氏はトイレの芳香剤をコレクションしていて、瑞枝の彼氏はパソコンのマウスをかじる癖があるという。 そして私の番が来た。何を話そうかと考え、彼氏である…

鼻くそ、無料でほじり放題だってよ

「ただいま! 行ってきます!」 「啓吾! 宿題やったの?」 中学2年生の勝山啓吾はカバンを置くなり外へと飛び出した。母親がわめいているのが聞こえるが、そんなことは知ったこっちゃない。今日は駅前に鼻くそほじり放題のショップが来ているからだ。 ショ…

睡眠で脳とけちゃう

歩く百科事典と呼ばれた岸原は、知識を詰め込むのが趣味で、寝る間を惜しんではあらゆる分野の知識を吸収した。そのジャンルは科学・文学・歴史・エンタメ・スポーツ・哲学・料理などなど多岐に渡る。テレビのワイドショーからコメントを求められることも多…