2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

旅に出ます

身内のお見舞いなどを兼ねて、しばらく旅に出ます。 9月中には戻ってこられるかと思いますが、 その間は更新を休ませていただきます。 また戻ってきたらバリバリ書きますので、よろしくお願いいたします。

父と娘のクイズ合戦

あれは9月になって間もない日のことだった。夏休みが終わり、始まった新学期にうんざりしていた夜に、父親が食卓で、妙な提案をした。 「なあ、和子。おまえ、シルバーウィークにどこか行きたいか」 「行きたい」休日にこんな街に留まるのはごめんだった。…

ブログ中毒者、会社を救うの巻 -blogholic save your company-

「あはははは。それ、ありえねーっすから。ぱねーっすから」 安田の笑い声が、部署内にこだまする。安田は先月、営業部から開発部に異動してきたばかりの20代前半の若者だ。 「どうした、安田。何かおかしいことでもあったか」部長の松浦が自分の机で仕事を…

便を放棄した僕

外は雨が降っており、バイトを休むことにした。こんな日には、働かずに、家で面白い映画を観るに限る。傘を差して家から50mほどのレンタルビデオ屋に行き、『便を放棄した僕』という映画を借りてきた。世界には不思議なタイトルの映画があるものだ。あらす…

冒険者狩り

マサヨの趣味は一風変わっていた。「冒険者狩り」だ。 彼女は海外ひとり旅をするような人間が大嫌いだった。日本人は小心者であるべきだ。そう言ったポリシーを持っていた。そのため、長期休暇には必ず、ひとり旅の人間が多く行くような国に行って、奴らに天…

夢遊病でキムチ

ケネスが目を覚ますと、そこはバーだった。ニンニクの強烈な匂いに耐えられなくなったケネスは部屋の隅にあったティッシュを鼻に詰める。バーには誰もいなく、店内も暗い。外が明るいのを見ると、きっと夜には営業するに違いない。どうしてこの場所にいるの…

OLよ、素直に汁を出せ!

私の名前はOL。いや、違った。私にもちゃんと名前がある。とは言っても、もはや私が私であることを誰にも求められていないから、OLで十分かもしれない。戸籍上の名前は、花田房子という。子供の頃はフサちゃんと呼ばれていたが、今ではそう呼んでくれるよう…

僕らのセンスマン

「センスマーン」 安倍課長が窓を開け、新橋のオフィスビルの群れに向かって叫んだ。その3分後、センスマンが窓の外から会議室の中に滑り込んできた。会議に出席する社員たちが声を揃える。「ようこそ、センスマン!」と。 センスマンは大澤アド社の企画会議…

ハルミとテルミのナイススライダー

スライダー? スライダーって何? ほんの数分前、親友のテルミから電話があった。テルミはハルミがいつも通勤電車で会う男の子に恋をしているのを知っていて、彼についての情報を仕入れるのに奔走してくれた。テルミは探偵さながらの情報収集力で彼の高校と…

奥田民生になりたい子供たち

これはどうしたことだろうか。 栗原は集められたアンケート用紙を読みながら、頭を悩ませていた。放課後の職員室には、もう誰もいない。他の先生方が帰った後にアンケートをゆっくり読もうと思っていた。 教師という職業に、栗原は飽き飽きしていた。毎年毎…

モテリマクリスティ

2020年、人類は大方の科学者の予想通りに史上最悪の食糧危機を迎え、40億人の人間が飢えで命を失った。その際、食べるものがない人間たちは当たり前のように共食いを始めた。共食いは動物界でも広く見られる現象であり、1500種の動物で記録されている。これ…

ビートルズ宇宙人説

タカシが会社から帰ると、3歳の息子のソラが今日もビートルズの『Across The Universe』を一心不乱に聴いていた。 タカシは心配になり、妻のサヨコに聞く。「また聴いてるの?」 「朝から晩まで、ずーっとね。もう何百回、何千回と聴いてるわ。こっちが話し…

ネガティブ王VSポジティブ王

私の名前は権藤悟。別名「ネガティブ王サトル」と呼ばれている。名前の由来はそのままだ。私は基本的にネガティブなことしか言わない。ネガティブこそが真実であり、ポジティブは嘘だ。ポジティブは人に余計な期待を持たせて傷付けるだけだ。 クラスの人間は…

マキマイケルの悲劇

2009年6月25日、遂に国会に「生まれ変わり願望命名反対法案」が提出された。この国会中継の模様はテレビで大々的に生中継され、真木新太郎は目を血走らせながら、食い入るように画面を見つめていた。 法案を提出した政治家のタカハシは証人として3人の人物を…

駅員の嘘

柳刃寛太が東京駅の駅員として働くようになって、ちょうど半年が経とうとしていた。 これまでは休みをもらうことなく、がむしゃらに働いてきた柳刃だったが、どうしても休みをとりたい日が出てきてしまい、柳刃は駅長室に直談判に行くことにした。 「柳刃寛…

聖なる若づくり 〜Holy Anti-Aging〜

神様は人々のすぐ隣りに住んでいらっしゃいます。あまり遠くにいると、人間たちのことがよくわからなくなりますからね。以前に、神様が空の上に住んでいた時は、人間たちの本当の悩みがわからずに苦労したそうです。その当時、戦争などが頻繁に起こったのも…

ネクスト骨レーション

今から5年前、娘のハルカの幼稚園ではパンクが大流行していた。理由はお笑い芸人のミスフィッツ小島が出てきたからだ。小島はガイコツの絵が描かれたスカルスーツに身を包み、「そんなのアナーキー」だとか、「はい、ノーフューチャー!」だとかを叫ぶ。大人…

遅咲きの拓

なけなしのお小遣いで、どのおでんの具を買おうかとファミマで迷っていたら携帯電話が鳴った。見ると、それは知らない番号だった。 「はい」ミサトは知らない番号でも出ることにしている。友達は気味が悪いからと言って出ない人が多いけど、たとえ間違い電話…

ガルシアの遺言

「最後に言いたいことはないか。遺言を聞いてやろう」 ホセは引き金を引き、ガルシアの額に銃口をつけた。ガルシアは俺たちの組の麻薬を横流しして、莫大な利益を得ていた。こういう悪知恵の働く奴は地獄への片道切符を渡すのがふさわしい。 「グ、globeの」…

その程度

幼馴染の深沢くんが僕の“勇気”を盗んでから、もう2ヶ月になる。あれは恵比寿の居酒屋だった。僕が会社の飲み会で会計をしていた時、お金が足りなくてアタフタしていたから、ちょっとした油断があったのだろう。深沢くんは突然現れたかと思ったら、久しぶり…