2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧

腰痛王国へようこそ

この3月に高校を卒業した私は、4月から腰痛王国に入国することを決めた。私は高校1年の時に腰痛を患って以来、部活もやめて勉強も放棄した。よく努力すれば人生はなんとかなると人は言うが、あんなのは嘘っぱちだ。テニス部のエースで成績も優秀だった私は…

土土土土土(ドドドドド)

母から土の中に埋まるように言われて3週間が過ぎた。母は自分の言った命令のきつさに気がついたのか、僕が埋まって以来、毎食欠かさずに食事を持ってきてくれる。しかし、決して土の外に出ていいとは言わない。 僕がこうして土の中に埋められたのは、インタ…

エツパチコはよくある手法

3年間、グルジアに留学していた私が久しぶりに日本へ帰ると、テレビに出ているのは知らないタレントばかりだった。 と、ここまではよくある話だったが、誰もが口を揃えて「エツパチコ」という言葉を言うのが気になって仕方なかった。最初はただの流行語だと…

部屋とエンヤと桑田と私

「おい、古村! おまえ昨日、体育祭さぼって何してたんだ?」 担任の庄田先生の低い声が教室内に響き渡り、クラス中の視線がぼくに注がれていた。ぼくは遂にこの瞬間を迎えることができたことにとても興奮していた。 ぼくがあの感動的なエピソードを聞いたの…

総理大臣のスイッチ

「奴さん、全然口を割らないですね」部下の徳本が上司の相原に向かって言った。 「ああ。なんてったって、国民を最後まで騙しぬいた人間だからな。一筋縄ではいかんだろう」 相原が取調べをしている元総理大臣の名前は定木万蔵と言った。定木の政治家として…

万引き兄妹

妹に万引きを指示して2時間が経つが、帰ってこない。逮捕されたのか? すぐさま妹の携帯に電話をする。出ない。メールも一応入れてみるが返事はない。俺は気になって、スーパー「マルダイ」へと自転車で向かう。 マルダイは買い物客でごったがえしていた。…

目が覚めるとそこに鶏肉が

恭二は深夜のつまらない映画を観ながら、昨晩自分の言ったことを後悔していた。同棲している恋人の沙良は鶏肉しか料理のできない女で、ついついそのことに対する不満をぶちまけてしまったのだ。 「おまえ、いい加減にしろよ。いつもいつも鶏肉ばかりで、俺を…

深海のドーム

九条の空が薄暗くなっていく中、京セラドームでは阪神vs横浜の開幕戦が始まっていた。開幕投手に選ばれた安藤優也の今年に投げる意気込みは生半可なものではなく、この試合の初球が2010年の成績を決めるだろうと思っていた。城島のサインを覗き、首を縦に振…

裏切りのヒーロー

「あーっと、ここでようやく柴崎がゴール! なんと122人中の120位! またも惨敗! 見後に惨敗! 国民の期待はまたしても裏切られてしまった!」 アナウンサーの耳障りな声を聞くだけで、柴崎は便器の中に顔を突っ込みたくなる。彼は今、前回のオリンピックで…

木苺と頭のかたち

カフェをオープンして3日も経つが、まだ客はひとりも来ない。原因はわかっていた。店の場所が極端に悪いからだ。お店が成功するか否かは、場所が7、8割を占めていると思う。それなのにもかかわらず、自分はこんな辺鄙な場所を選んでしまった。最寄り駅は3つ…

会社員としてあるまじき行為

月曜日の朝、長瀬善也が就業開始時間ギリギリに出社すると、5分後に緊急会議が開かれるとの通達が机の上に配られていた。遅れないようにと長瀬はダッシュで会議室へと向かう。するとそこには、すでに長瀬を除いた全員が集合しており、長瀬が入ると、室内の…

猫を語る4

「久しぶりに、バッドボーイズ集合だな」 1週間前、時田がミニストップの飲食ブースでこう言ってタバコに火をつけた時、僕は興奮した。隣りに座る長沼も同じような気持ちだったと思う。 しかし、あれから1週間が流れ、何もやることがなくなった僕らバッド…

猫を語る3

築地の市民会館にて、「猫の未来を考えるシンポジウム」が開かれた。これは、日本の都市化が進むことで住む場所をなくしてしまっている猫を救おうという趣旨のもので、国の予算を大々的にかけたプロジェクトだった。政治家たちによる猫対策委員会が作られ、…

猫を語る2

テレビの制作会社に勤める鮎川貴志がドキュメンタリー番組の撮影でアフリカのケニアに旅行に行った際、マサイ族の人と話す機会があった。彼の名前はソロモンと言い、貴志が泊まったロッジで働いていた。ソロモンは貴志と年齢も変わらないように見えたが、子…

猫を語る

学校で最も目立つ3人組がいる。ヨシエ、ハナエ、キミエの3人だ。彼女たちは成績もよく、スポーツ万能で、服の着こなしも決まっていてルックスも飛びぬけていた。彼女たちの仲間になりたがる者は多かったが、誰もその固い絆の中に入ることは困難だった。彼女…

ごめんねシャボン

益美の家の網戸には毎日夕方5時になると、1匹の蚊がやってくる。益美はこの蚊にシャボンという名前をつけていた。益美はシャボンに恋をしていた。シャボンはきっと、ジャニーズ似の王子様の生まれ変わりで、いつかきっと人間に姿を変えて、私をヨーロッパま…

真央ちゃんがくれた銅メダル

白々しい風がなまめかしい色合いの日射しとともに降り注ぎ、ジャンボジェットのように翼を広げたカラスが切り立った崖の斜面から真っ逆さまに人間の頭を突きに落ちてくる。突かれた人間は額からは血の花束が生えてきた。彼の手にあった国旗は岩の上に無残に…

早く友達になりたい

目が覚めると、窓の外には朝日がのぼっていた。城田武郎は焦って学生服に着替え、カレーパンを頬張って学校に向かう。昨夜は今日の試験のために徹夜で勉強する覚悟だったが、夜の3時半ごろには力尽きて寝てしまった。 あれは確か山田洋次監督について勉強し…