2010-06-01から1ヶ月間の記事一覧

暑い日は仕事しない

「今日は暑いので、一身上の都合によりお休みをいただきます。ご迷惑をおかけして大変申し訳ありません 幡ヶ谷」 社内のメーリングリストにそんなメールを送信した後、幡ヶ谷は家の中でクーラーをかけながらゆっくり涼もうとしていた。右手には銀魂の単行本…

日本が勝ったらしたい3つのこと

日本が次の試合に勝ったらやろうと決めていることがある。俺は行動力がないため、こういったことに後押しされないとできないからだ。俺はやりたいことのリストを書き出してみた。そこにはちょうど3個あった。よし、きりがいい。 それらの3項目を書き出してみ…

ご飯が固くなった日に家族再生

「あっ、こんなに固い…」 姉の算美がしゃもじをお釜に入れながらつぶやいた。それを聞いた僕はそんなのは当たり前だと思う。今は夏なのだ。しかも、算美ときたら大学のサークルの飲み会やら何やらで全然家に帰ってこないのに、たまに帰ってきたらこういう文…

喜ばない隣人を叱ったOLの話

日本戦が始まる30分前、テレビが壊れた。パニックに陥ったわたしは隣人の家にあがりこみ、テレビを見せてもらおうと目論んだ。隣人の顔は何度か見たことがある。おとなしそうな大学生風の青年で、体格も華奢で、性格にも問題がなさそうだ。わたしが部屋にあ…

旅行会社の誤算

2010年11月のことだった。天気予報が今年一番の寒さになると告げたある日の午後、日本国内で6000人の人々が忽然と姿を消した。政府はすぐに北朝鮮の仕業ではないかと疑ったが、ここまで組織だった拉致は潤沢な資金と組織力がないと無理だったので、この疑惑…

我が社の尿バトル

ふと口を滑らせてしまったのがいけなかった。同僚との無意味なお喋りの際に、この社内では自分が一番尿の量が多いと発言してしまったのを佐原社長は聞き逃していなかった。 我が社の人数は15人と少ないため、社内のお喋りの内容は筒抜けだ。だが、まさかこん…

息子の過ち

鹿島笹雄が居間でゴロゴロしながらプロ野球中継を観ていると、妻の笹子がすごい剣幕で部屋に入ってきた。 「あなた、ちょっと聞いてちょうだい」笹子が息を整えながら言う。 「聞いてるよ。少しは落ち着いたらどうだ」 「ごめんなさいね。ちょっと驚いちゃっ…

親知らずコレクター

ノンフィクション作家の片平は新聞の片隅に気になるニュースを見つけるのが日課だ。面白い記事があったら、すぐに取材のアポをとり、誰も注目しないようなニュースから面白さを見つけ出す。こうして片平の名声は世に広まっていった。 片平は先日、またその嗅…

無の無乗は無

劇作家を目指す佐藤至道が劇団石ころ帽子を始めて1年が過ぎた。佐藤はそれまでぼんやりと演劇をやりたいと思っていたが、友達もおらず、演技の勉強も受けたことがないため、自分でも現実味のない夢だった。しかし、ある日あるバンドのライブをネット上で観…

キミは明るいからダメなんだ

「おまえは明るいからダメなんだ。もっと心を改めて暗くなれ」 倉木の言葉を明石は黙って聞き、事実その通りだと思っていた。これまでも自分が何か仕事でミスをするたびに、周囲の人間はその性格を直せと言った。明石が暮らす氷室村ではネガティブでいること…

エレベーターでの正しいあんパンの食べ方

わたしが子供の頃、父親はいつもエレベーターの中であんパンを食べていた。もう少しわかりやすい説明にしよう。父親と買い物に行くと、父親は必ずあんパンを買っていた。そしてそのあんパンを帰り道で食べるのではなく、うちのマンションのエレベーターに入…

ケムノンくん

ピンクに赤、ブルーにイエローにグリーン。これが持っている全てのスニーカーの色。髪型はいつもウェットなのにボサボサで、どこで買ったのか聞きたくなるような珍しい柄のTシャツに七分丈のズボン。手首と足首がかゆいのか、クネクネと変なダンスを踊り、ム…

寝顔物語

国民的アイドル・坂田ましろのことを知らない人は今の日本にはいないだろう。坂田は文武両道で才色兼備を地で行く人だった。彼女は子供の頃、新体操の金メダルリストになり、その後出版した小説がベストセラーに。シンガーソングライターとしてミリオンを突…

わたしはきっと知っている

わたしの記憶にはひどくムラがあるらしく、そのお陰で周りの人々に迷惑をいつもかけます。たとえば、道ばたで高校の同級生にあったとします。わたしの記憶が調子いい時は、これが誰だか気付き、自分から声をかけ、立ち話を楽しむことでしょう。しかしながら…

フリーランス狩り

近頃、社会的に問題になっていることがある。「フリーランス狩り」だ。この狩りは2008年ごろから都心を中心に頻繁に見られるようになったと言われている。フリーランスという制度に対して納得できない会社員の人たちが、彼らの存在を抹殺するために徒党を組…

たそがれの4番打者

梅頭マサルはその夜、オレンジレンジ祭りと称して、オレンジレンジのこれまでのCDを夜通しぶっ通しで聴こうと計画していた。オレンジレンジはこれまでオリジナルアルバム6枚を出しており、その他にもミニアルバムやリミックスアルバムなどの企画盤がある。夜…

5月はきっとやってくる

ビル・マーレー主演のラブコメディ『恋はデジャ・ブ』という映画をご存知でしょうか。TVレポーターのフィルという男がペンシルバニア州にあるパンクスタウニーという小さな村を訪れるのですが、そこではなぜか毎朝目覚めると同じ日付のままになっている。こ…

昔話は禁止です

常盤孝嗣新首相の掲げた政策の目玉となるのが昔話禁止政策だった。首相の言葉を借りるなら、人は過去を見るから現在を悲観するのであって、現在か未来しかないと思えばとことん前向きになれるということだった。 常盤はその政策を施行するにあたって、徹底し…

ボクはこんなことに興味がある

「ええっと、はじめまして。練馬区から来た田沼ミノルと申します。最近、僕が興味ある作家と言えば宮部みゆきですね。最近、『模倣犯』と『理由』を読んだのですが、どちらも面白かったです。宮部みゆきを読んだことでミステリーに興味を持ったので、今度は…

友達はボーナスで買おう

隣の佐藤家からまたも夫婦喧嘩の模様が聞こえてくる。庄田譲治が松原町1丁目にあるメゾン・ド・パピコに引っ越してきて2年が経っていたが、隣接する一軒家との距離が近すぎるため、声が筒抜けになって聞こえてくるのだ。 この日の喧嘩の内容は、ボーナスの…