ヘイヘイドッジボール

 2010年、東京湾にサメが増えた。すると誰も寄り付かなくなり、海は閑散とした。
 しかし、2011年からおかしな遊びが流行した。サメにドッジボールを当てるというものだった。サメのヒレドッジボールが当たるとドムッといい音がする。みんなこの音が聞きたくて、週末はドッジボールを手に東京湾に集うのだった。
 ドムッの音に目をつけたミュージシャンはこぞってサンプリングした。着うたでもドムッに音階をつけたものが、よく電車などで聞かれた。
 この遊びのお陰でドッジボールメーカーはウハウハと潤った。しかし、環境的な問題はあったため、国際的な批判も浴びていた。海にドッジボールがプカプカ浮かんだままになるのは、さすがにいいことではないのだ。
 そこでドッジボールメーカーは起死回生の策として、水に溶けるドッジボールを発明した。これは寒天で出来ていた。
 こうしてドッジボールをサメにぶつけるブームは廃れることもなく、何年も続いた。私も今週末は、娘と祖母と妻を連れて車にたくさんのドッジボールを乗せて、東京湾に行く。