米責めプレイ

 うーうー、うーうーと鳴るサイレンの音で目が覚めた。何だろうと思って窓の下を見るとサイレンは止まった。どうやらまたこのマンションから1人運ばれることになるらしい。
 CMの力は怖い。今日も朝から晩まで、米を食べようという内容のCMばかりやっていた。現在の日本では米がたくさん収穫できて余ってしまうため、政府が広告機関に流させているとの噂だった。だけど、米の食べすぎは身体に毒だ。いや、何にせよ、食べ過ぎは身体に毒なのだ。それなのに、朝5杯、昼15杯、夜7杯のご飯があなたを健康にする!なんてCMをやっているから、人々はそれを実践してしまう。ただでさえ運動不足が問題になっている昨今、腹の中は米でいっぱいになり、消化機能はうまく働かず、やがて倒れて救急車に運ばれる。そんなケースを昨年12月以来何度も見てきた。
 私はもともとCMとかそういったメディアとかの言うことを信用しない性質だから、普通にお茶碗1杯分くらいの米しか食べない。でもそうすると、親類とか近所のみんなは米を食べる量が少ないと病気になると言って、私の留守中に米を炊いて玄関の前に置いといてくれるのだ。ましてや風邪など引いたことが知れようものなら大変なことになる。どこから聞いたのか、親は私が風邪を引いたことを突き止めると、米炊きサービス(昨年12月から、自宅に来て米を炊いてくれる人間を宅配できるようになった)を手配し、私の留守中におせっかいそうな男女たちがどやどやとやってきて、シャカシャカと米を炊いてくれる。私は米を食べるために生きているわけではないのに。
 今日も大学の学食では、ランチの時間に米を2杯しか食べなかった男の子が、たくさん食べる人間からリンチにあっていた。私は止めに入りたかったが、おまえも仲間かと言われていちゃもんをつけられるのが怖くて、何も言えなかった。
 マンションの人が運ばれるのを見届けると、私はテレビをつけた。すると、案の定テレビでは米のCMがやっていた。犬と猫が「人間に負けるか!」と言いながら、山盛りの米をがっついて食べている映像だった。私はあまりのくだらなさに、声をあげて笑った。