肉屋 or 魚屋!!

 買い物に出るたびに、脚がすくむ。これはきっと…恋…。
 結城七海がこの町に越してきて2ヵ月が過ぎた。七海はビジネス系の専門学校の1年生だったが、授業のあまりのつまらなさに辟易して行くのをやめてしまった。この町であと2年、何をしようか。そんなことを思っている時に運命の出会いを果たした。
 あれは忘れもしない4月25日。初めてこの町の商店街を買い物した時のことだった。
 雷…。七海の心に走ったのは、まばゆい一筋の光…。
 七海の心を動かしたのは、肉屋と魚屋で働く2人の男性。
 ワタシハ、フタリニ、コイヲシタ…。
 目が合うと、2人とも微笑む。罪作りな視線。思わせぶりなその表情。
 七海はどちらに対しても、とっておきの笑顔で応える。私ってコ・ア・ク・マ…。そんなことを思いながら。

 しかしこの日は、2人ともいつもいるはずの店番には立っていなかった。どこにいったのかしら。私を混乱させようとしているの? 罪作りなオ・ト・コたち…。
 七海はため息をつき、あまり行かないスーパーに入る。肉も魚も、2人の男目当てにそれぞれの店に行っていたからだ。
 すると、スーパーで七海は予想もしなかった光景を目にする。スーパーの入り口を入って横にある、モスバーガーで2人がシェイクを飲んでいたのだ。
 七海は混乱した。なぜ? なぜ? なぜ?
 七海は2人の背後に回り、何を話しているのか聞く。いったい何を話しているのだろう。モシカシテ、ワタシノコト? なんてね。
 すると、2人の内容はお互いの奥さん自慢だった。七海は耳を疑う。結婚してるなんて、聞いてない…。だって、指輪していなかったから独身だと思ったのに。ソレッテ反則ジャナイ?
 七海は泣き崩れる。それに気付いた2人が近づいてきた。
「大丈夫ですか?」
 声をかけてきたのが肉屋か魚屋か、そんなことは七海にはどうでもよかった。ただ、どちらでもいいから私の唇を今すぐふさいでほしかった。

 
 そこまで書いて、湊譲二は深くて重いため息をついた。ケータイ小説なら簡単に金が儲かると思ったが、自分にはとても書けそうになかった。5時間もかけてこの出来とは、恥ずかしいことこの上ない。これまで通り、真面目に働こう。苦手な上司ともうまくやろう。譲二が時計を見ると、もう夜の2時だった。明日は会議だ。早く寝ないといけない。