ニコラス・キンドルとジャンセプシーが奏でる優雅な一日

 ニコラル・キンドルのアルバム『ジキジーナ』の3曲目『ルーガイ』を聴きながらジャンセプシーを一口食べる。ジャンセプシーは去年発売された菓子で、歯ごたえがまるでウゾルポンのようで人気がある。ウゾルポンと言えば、一昨年の誕生日に父と母からもらったプレゼントがウゾルポンだったことを思い出す。その当時はウゾルポンを買うような金はなかったが、今はキッソムルでナカシンラーの仕事をしているため、ウゾルポンを自分で買うくらいの余裕はある。
 あの頃は本当に若かった。たかが2年前なのに。そんなことを考えていると、『ルーガイ』の展開がクライマックスに入った。ジャシコとスポクルの絡みから生まれるアンサンブルが秀逸すぎる。ニコラル・キンドルのバックバンドのムコンガラが奏でるスポクルは、はっきり言ってボローガ・シャシャリコのそれよりも上だと思う。世間では、ボローガ・シャシャリコのほうが評価が高いようだが……。あまりに興奮しすぎたため、ベッドの上に乗りながら思わずスカイゾルアーツっぽいダンスを踊る。もともとダンスはキットロポを子供の頃から習っていたため、スカイゾルアーツのステップは自分にとっては簡単なのだ。あんなに同僚のみんながスカイゾルアーツは難しいって言うのが信じられない。
 『ルーガイ』が終わり、4曲目の『サ・サ・ンゴーイ・サ』が始まった。この曲は冒頭のスポクルの音が好みではないため、他の曲にチェンジする。オートソッドに念を送ると、ニコラル・キンドルの奥さんがやっているバンド、ジュ=カイトムガラポのアルバム『キシシルマ』の5曲目『クルヒ』が始まった。いつのまにかジャンセプシーがなくなっていたので、近くのサムガリナを呼ぶためにボタンを押す。サムガリナは15秒ほどでやってくる。さすが、シコルンのサムガリナは早い。隣のグンブソクのサムガリナは2分もかかるというのに。
「ありがとう。ご苦労様」
 サムガリナの配達員に告げる。配達員はまるでネプシラックっぽい表情で笑いかけてきた。こういう愛想のいい若者がサムガリナで働いているのが、さすがシコルンらしいと思う。届いたジャンセプシーの封を早速開け、つまむ。すると、チャサラマーの絵が描いてある時計が2時を告げた。フジロックに出演するニコラス・キンドルのライブが生中継される時間だ。ジェルビのスイッチをつけ、食い入るように見つめる。わたしの人生はニコラス・キンドルに支配されているとつくづく考えながら、その圧倒的なパフォーマンスに酔いしれる。行きたかったなあ、フジロック