左を向いてアッカンベー

 いいですか。しっかりノートをとってくださいね。ここからが一番大事なところです。左を向いてアッカンベーをすると、なぜ身体にいいのかと言いますと、まずアッカンベーをすることで舌の筋肉を鍛え、脳を刺激します。そしてアッカンベーという子供っぽい仕草をすることで、日々の嫌なことを忘れて、抗ストレス的作用があります。これは毎朝やってください。毎朝やることで、自分の子供の頃の原点に戻り、若返りにも有効です。
 また、なぜ左向きなのかと申しますと、左を向いてアッカンベーをしたほうが心臓に直接血液を送り込み、全身の血流がよくなるのです。血流は身体の左側から右側に流れていますから、ここで右からやってしまうと、血液の流れに逆行するため、身体や心臓に負担を与えることになりかねないのです。
 じゃあ、ここで私の真似をして会場に集まった皆さんで一緒にやってみましょう。はい、左側を向いて、そう、そこで口を大きく開ける。そして舌を出す。その後大声で言いましょう。「アッカンベー」そうですね。いいですね。アッカンベーのアッカンの発音が特に脳に優しく作用するようにできていますから、アッカンのところに特にアクセントを置く言い方を目指してください。アッカンがしっかりしていれば、ベーは流してかまいません。ベーを言っている時はリラックスの時間にあてましょう。
 ただ、この左を向いてアッカンベーは1日のうち朝と晩の計2回を目処にしてください。多くても5回。それ以上になってしまうと、首筋をおかしくして腱鞘炎になってしまう事例がいくつか報告されています。そうですね。ここはしっかりメモをとる場所ですね。1日2回です。
 じゃあ、この辺で今日の講義は終わりたいと思います。左を向いてアッカンベーの法則は、誰に話してもかまいませんよ。話せばきっと周りからも感謝されること請け合いです。会費は今から回る女性スタッフに渡してくださいね。もう一度、金額を確認しておきますと、今日の講義分は7万円です。次の講義は来週の水曜日です。その時には、「口を閉じたまま舌打ち」についての効用などを講義したいと思います。今日はありがとうございました。


 この講義を聞いた会員たちは速やかに7万円を払い、ホテルの一室に作られた会場を後にした。会員たちはそれぞれがお互いに見えないところまで来たのを見計らって、左を向いてアッカンベーをした。舌を思い切り伸ばしたら、のどの血流がよくなり、少し若返ったような気持ちになった。ただ、先生には1日2回ときつく言われているので、今日は寝る前にあと1回やるだけにしておこう。明日以降はしっかりと朝と晩に時間を守ってやることにしよう。