平成生まれのおもち対談

 「何が平成生まれによる、だ! おまえが集めてきた面子は全員昭和生まれだぞ!」
 編集長の言葉に、新入社員の青橋はその苗字の通り顔が青ざめた。先週、家で対談参加者のプロフィールをチェックしている時に、あまりの面白いお笑い番組を観ながら確認してしまったため、計算を間違えて全員昭和生まれだと勘違いしてしまったのだ。
「すみません。今から昭和生まれに変更ききませんか?」
「もう無理だよ。表紙は入稿してしまったんだ。もしもおまえがその企画を貫きたいのだったら、平成生まれのおもち好きを集めてこい」
「わかりました!」
 青橋は急いでインターネットを駆使し、平成生まれのおもち好きを集めようとしたが、夢は叶わなかった。結局、平成生まれということだけに重きを置いて、おもち好きではない平成生まれによる対談が行われたが、「白くてやわらかい」だとか「醤油をつけて食べると美味しい」などの、ごくごくありがちな意見しか飛ばず、全く盛り上がらないまま対談は終了した。
 編集長は対談が終わった後、青橋を会議室に呼び出した。
「どうなるか、わかっているだろう。おまえはクビだ」
 青橋はショックのあまり、無言のまま床に倒れこんだ。朦朧とする意識の中、自分があの時お笑い番組を観ていなかったら、昭和生まれによるおもち対談が大層盛り上がっていたに違いないと思った。