がんばれ粘膜

 『がんばれ粘膜』というアニメが子供や大人を巻き込んで大流行している。これに似たタイトルの『がんばれ元気』は堀口元気を主人公としたボクシング漫画だったが、『がんばれ粘膜』の主人公は人間ではなく、粘膜そのものである。ストーリーは、アラサーOLの西島沙耶の鼻と口に所属する粘膜が数々の雑菌を撃退し、宿主の沙耶を健康にしていくという物語。当初の企画段階においては、このプロットは大半の反対を食らったものの、敏腕プロデューサーの桐山健は絶対に当たると主張。桐山の予想通り、現在の健康ブームに便乗して、多くの人の心をつかむ結果となった。
 主人公の粘膜は、ルックスが本物の粘膜にしか見えない。従来のアニメの常識から行くと、このようなグロテスクな主人公が受け入れられるわけはないのだが、この視聴者に媚びを売っていない描写が「リアルでたまらない」として礼賛された。粘膜グッズはTシャツや携帯ストラップなどで、よく街でも見かけることができる。
 アニメの中では、粘膜が使う決めゼリフとして「粘膜の名にかけて!」というものがある。この言葉は2011年の流行語大賞を獲得。風邪を引いたり、体調を崩しがちなサラリーマンやOLが、電車の中で踏ん張りたいときによくこのセリフを言うので、もはや知らない人はいないだろう。『がんばれ粘膜』の原作マンガは現在9巻まで刊行し、総売り上げは2000万部を突破。その勢いは衰えを知らず、まだまだブームは続くだろうと言われている。