まんまるなでしこ

 やせすぎ女性が急増とされた時代も今ははるか昔、2022年を境に日本人女性の体型はかつてないほどに太り始めた。原因はいろいろあるとされるが、当時日本人女性の2人に1人が好きであると言われた男性アイドルの児嶋正春、略してコジマサがぽっちゃり女性が好きとカミングアウトしたこと、電気自動車が安価で広く普及したことにより国民の10人に8人が車を保有することになり、運動不足に陥ったこと、GDPの低下や失業率の増加による若者の無気力化などが挙げられる。何にせよ、日本人はスレンダーであるという常識は打ち破られ、男性も女性も世界で1、2位を争う肥満大国となった。
 しかし現状に慣れることのスピードにかけては日本人が世界に勝るものはない。日本人はそれまでDNAに刻まれてきた美的感覚を都合よく修正し、太った女性こそが美しいとみなすようになった。特にこの時代に好まれていたのが、くびれも何もない、完全まんまるな体型である。このような体型の女性がコロコロと道を転がっているのを見ると、男性は目で追いかけるのであった。
 通販サイトなどでも、まんまるになるためのグッズが数多く売られていた。「1日でまんまるになれる高カロリー食事セット」「風呂にもトイレにも行かなくて平気な部屋グッズ一式」「綺麗なまんまる体型を保つための肉ヤスリ」などなど。これらのグッズを女性たちは買い漁り、世の中はまんまるの体型の女性で溢れかえった。
 海外メディアは最初、このような日本人女性の体型の変化を気味悪がっていたが、あるときから方針を転換。まんまるな体型が日本の国旗のイメージと合うのか、Rising sun fatなどと呼んで絶賛するようになった。これに気をよくした日本人女性たちは、ますますまんまる度合いを増していったものだ。
 まんまるな体型は住居環境も食糧事情も悪くした。さらには肥満を原因とした病気も急激に増加したため、医療費がかさむようになった。それらのマイナスな要素もあるにはあるが、海外から褒められるのは気持ちのいいものである。諸外国の要人たちは、日本人が肥満化していくことで国家が弱体化していくのがわかっていたから、わざと褒めていたのだが、これに日本人は永遠に気づかなかった。