20秒の森

 そもそも、だ。森を時間で測ろうと言うことが間違っていると言いたい。担任教師のKは森と時間は密接に繋がりあっており、20秒で事足りると言って聞かない。私はこの旨を父親に話したところ、おかしな本を引っ張り出してきた。タイトルは『くしゃみ一族のカカオ』。くしゃみ一族は森を15秒としてとらえ、ここにカカオを発明した部族のキキーラがやってくる。キキーラの性格は私と似通っているからイメージしやすい。キキーラはカカオの匂いを使ってくしゃみ一族のくしゃみを誘発する。くしゃみ一族はくしゃみを神聖なものととらえているから、くしゃみを誘うキキーラたちを神の使者ととらえる。こうしてキキーラたちの術中にハマったくしゃみ一族らは、あと5秒くしゃみをする時間を設けるために森を20秒としてとらえることに設定する。私はその本を読み、担任教師のKに謝罪しなくてはならないと思った。無知ほど恥ずかしいものはない。私は父親にどうやって謝罪しようかと相談した。父親は素直に自分の無知を認めなさいと言った。私は翌日、担任Kのもとに行き、森が20秒に賛成することを告げた。その際に、私はくしゃみを2回ほどした。担任Kは全てをわかったと言う顔で微笑んだ。