シャキッと震災

 私が子供の頃、祖母は地面に向かって「シャキッとしんさい!」と語りかけ、バンバンと地べたを叩くということを毎朝続けていた。祖母に理由を聞くと、「こうすると、地盤が固くなって、シャキッとしてくれるんじゃ」ということだった。私は子供ながらに、地盤が言うことを聞くのだろうかと思ったが、祖母があんまりムキになって続けるものだから、いつの日か自分も続けるようになっていた。
 やがて私にも息子が生まれ、息子の前で「シャキッとしんさい!」と地盤を叩いていると、息子もそれを真似するようになった。息子は友達から、その迷信がかった仕草を21世紀的ではないと散々バカにされているようだが、やめるつもりはないらしい。息子はひいおばあちゃんのことが大好きで、95歳を超えてもなお、毎朝地盤を叩いている祖母を見ているからか、自分もその仕草を一生続けようと思っているようだ。
 私と息子は今では週に1回、祖母の家を訪れる。訪れるとは言っても、歩いて20分ほどの距離なのだが。息子は祖母に会うと、「まず地盤を叩こう」と言って庭に誘い、私と3人で「シャキッとしんさい!」と言いながら地面を叩く。この迷信が効いているのか、そうでないのかはわからないが、私が物心ついてから、この一帯では大きな地震はない。