えくぼのねむけ

 エクボがある人のほうが眠気が強いというデータが科学者からあがってきたので、私は自分の権限を使い、それを揉み消した。もしこのデータが公表されたら、エクボがある人が眠る場所を確保しろと暴動を起こし、パニックとなることは確実だからだ。科学者は不満そうな顔をしていたが、袖の下をほんの少し渡したら黙った。科学者なんぞ、ちょろいうものである。
 あれから数ヶ月が過ぎ、街ではエクボの人々がいつもと変わらないエクボを浮かべて笑っている。私はそれを見てとても幸せな気持ちになる。彼らをパニックから救ったのは、他の誰でもない。まぎれもなく私なのだ。もう少し感謝をしてもいいんじゃないかなと心の中で思い、笑う。