驚異の新技術「検索サイト」

 この講義を聴いているキミたちだけに、とっておきの新技術を教えよう。キミはこのカオスな時代の中でどう生きようか迷っているに違いない。カオスな時代において、もっとも重要な武器は何か。それは疑うこともなく、情報である。
 これからの時代は情報のスピード感というものが運命を分ける戦いとなる。図書館に行って文献を探したり、百科事典を隅から隅まで読んで知識を広げるような時代はもはや終わりを告げたのである。
 え? もったいぶるのはやめろって。そうだね。このスピーディな時代において、時間のロスは致命的だ。早いところ本題に入るとしようか。僕がここでキミたちに教えるのは、「検索サイト」の存在だ。検索サイト、そう聞くとどんなものを思い浮かべる? 探しものを探してくれるロボットのようなものか? 公民館の片隅にある閲覧スペースのようなものか? 申し訳ないが、それらのどれもが外れている。これはまだ現代人の想像力では受け止めることができないものなんだよ。
 検索サイトというのは、インターネットというパソコン内でのネットワークの中において、一瞬にしてキミの求めるものを検索してくれるサイトのこと。だから、検索サイトというんだよ。
 もう少しわかりやすく説明しようか。ここまで聞いてもチンプンカンプンな人たちは多いだろうから。まずは、塩分という言葉を検索サイトに入力してみようか。すると、塩分に関する記事や説明が何十万件とヒットする。あ、ヒットと言っても野球のヒットじゃないからな。該当するものが画面に現れるという意味だよ。
 だから塩分について知りたくて本屋や図書館に行ったり、中学校時代の理科の先生に電話をかけて質問していた諸君! 今すぐにその愚かな行為をやめたまえ。これからの時代は検索サイトで、一瞬にして塩分の秘密にアクセスすることができるのだから! あ、たびたび申し訳なかったね。ついつい僕も、熱くなるとコンピュータ用語を使いがちなのは悪い癖だ。アクセスするというのは、電車で目的地へ行くことではなく、ネットワークの中の情報にたどり着くということだよ。
 おそらく検索サイトについて公の場で語ったのは、日本では僕が初めてなんじゃないかと思う。きっとこの講義はのちのち歴史的な一事件として教科書に載ることになるだろう。そんな貴重な現場に居合わせたことに、キミたちは心震わせていいんだよ。家に帰ったら、検索サイトのことを家族に言いふらしたまえ。おそらく彼らは最初、キミのことを狼少年扱いするだろうが、あと何十年も経てば自分たちが間違えていたことに気づき、謝罪してくるに違いないだろうから!!