2009-08-11から1日間の記事一覧

夢は汽車

「なあなあ、おまえの夢、何?」 何この人。このクラスになってからまだ20分も経ってないのに、いきなり授業中に話しかけてきて。しかも、その内容が夢ですって? 初めての会話なのに、人のプライベートに首つっこみすぎじゃない? 「何、黙ってるんだよ。あ…

マジソン軍の箸

「昔な、『マジソン軍の箸』って映画があったんだよ」 定食屋で2人で夕飯を食べていると、父が唐突に話しかけてきた。 「へえ、どんな映画?」 「なんかな、なんとかっていう名前の中尉と、なんとかって名前の女中さんが登場する映画なんだが、その女中さん…

現代の貴族

「現代の貴族、吉田晴子ちゃんです。どうぞ!」 「ひゅーひゅー。晴子、今日も貴族っぽいよ!」 「うれしくない! 晴子、そんなのうれしくない。先生、これは新手のいじめですよね」 「いいのよ、それはあなたの持って生まれた得だから大事にしなさい」 「も…

噂のかかと

私は啓次郎の目を見て、話し始めた。 「かかとの噂、流したでしょ」 「お、俺じゃないよ」 「あなたにしか話してないもの。それ以来、私のかかとをジロジロ見る人が増えたのよ」 「だから俺じゃないんだって」 「確かに面白いとは思うわ。かかとから水菜が生…

蛍光灯のお葬式

割れた。割れちゃった。私は割れるものはなんでも弔うの。この蛍光灯もお葬式に出してあげなくちゃ。 私はすぐに2組のポコちゃんに電話した。 「ポコちゃん、私。すぐ来て。今からうちでお葬式やるから」 「え? 誰ですか」 「私よ。コエダよ」 「コエダ? …

忘れる妻

夜、家に帰宅すると、旦那がいなかった。また、豆腐屋の主人の家に行っているに違いない。私は豆腐屋に走っていった。 「すいません、うちの旦那来てませんか?」 「ああ、いるけど。今、旦那は3人来てるぞ。おまえの旦那を勝手に連れて帰ってくれ」 しまっ…

旧作ソーダ

翔子は川を見ながら、俺に話しかけてきた。 「ソーダってすごくいやらしい響きだよね」 「明日から、そんなこと言っていると毎日ソーダ飲んでやる」 「いいじゃん。やってみなよ。私、旧作のお母さんに言うから」 「旧作って誰?」 「間違えた! ビデオレン…