2011-01-01から1年間の記事一覧

敬語を徹底しよう

こんなときだからこそ、こんなときだからこそ。呪文のように校長先生が繰り返す。敬語で喋ることを徹底しましょう。生徒たちはそれを聞いて、またかよ、と言ったようにうんざりとした表情を浮かべる。俺たちが暮らすこの地域は、敬語を使うという感覚が全く…

ムサボリン警戒

私は、皆に、警告する。今すぐムサボリン警戒をやめなさい。ムサボリン警戒は自分の人生を滅ぼすだけであるからして、つまりそれは有害なのである。 ムサボリン警戒は5年前くらいから流行った思想形態であり、今はその名前を知る人はいない。ジャーナリスト…

みんな疲れる

モーモー幼稚園で「正しい疲れ方」の講義を行っている三原真司に対する父兄からのクレームはとどまることを知らない。三原はモーモー幼稚園の片桐園長の同級生であることを理由に、同幼稚園で講義をすることを許された。そもそも三原の表向きの職業は、疲れ…

あなたのいいとこ見つけます

長野県の佐久市に住む牧田幸作は、昔から聞き上手でフォロー上手と言われ、やたらと人が集まってくることで有名だった。幸作と話していると、みんな自信が増すというのだ。幸作はそれらの意見を真に受け、地元で『あなたのいいとこ見つけます』という名前の…

お天気クレーマー

本日の最高気温は10度、最低気温は2度。夜の12時を過ぎて日付が回ったので、前の日の気温をノートにメモする。天気予報との気温差はそれぞれ2度ずつだ。 丸谷の日課は、その日その日の最高気温と最低気温を書き記すことだった。これを各テレビ局が放送してい…

モールス息子

宮城県にある小さな町に住む青山司郎の息子・健太は、大学卒業後に「モールス信号のような小説が書きたい」と言って家を出て行った。司郎はそれ以来、毎晩のように晩酌のビールをあおりながら妻の杉江に愚痴をこぼす。 「モールス信号のような、って一体どう…

モナ対リザの意外な結末

モナのキックがリザの耳たぶをかすめた。観客はため息を漏らし、一部の狂信的なリザファンたちが徹底的にモナへの罵詈雑言を強める。これはあくまで政治討論会で、プロレスではない。それなのに、モナは暴力という表現方法しか知らないため、こういった手段…

先生、脳がかゆいんです

前々からヨーコ先生には個別相談していた事柄だった。それは私の脳がかゆくてかゆくて仕方がないことだ。先生はおそらく成長期にありがちなことではないかと言って、様々な文献などを読んで対処法を調べてくれた。 そして今日、先生が連絡をとってくれた脳学…

20秒の森

そもそも、だ。森を時間で測ろうと言うことが間違っていると言いたい。担任教師のKは森と時間は密接に繋がりあっており、20秒で事足りると言って聞かない。私はこの旨を父親に話したところ、おかしな本を引っ張り出してきた。タイトルは『くしゃみ一族のカ…

こそばいからバイバイ

私がペットとして飼った5代目の蚊は私の欲求を満たさない。私は、蚊にはズブリと思い切り皮膚を刺してもらい、ちいっと舌打ちをしたくなるほどの痒みを与えてほしい。しかしこの5代目は蚊とは思えないほどのフェザータッチで皮膚を撫でるほどで、痒みも全…

西口は無表情

私の悩みは明るい性格で声が大きいことだった。とにかく何かあるにつけ、笑いが止まらなくなってしまい、仕事中にもゲラゲラと笑ってばかりいた。小さい頃は病気かと思って病院に行ったこともあった。しかし、医者はただ一言、「何の問題もありません。ただ…

あいさつ教室からの独り立ち

スケゾウがあいさつ教室に通うようになり、2年と3ヶ月が過ぎた。最初はあいさつ教室?と半信半疑だったものの、通いだしてみるとみるみるうちに成果があがり、昨年転職した先の会社ではハキハキと挨拶をするスケゾウ君というキャラ設定が同僚たちの間に浸透…

渋谷いずうぉっちゅんにゅー

「すいません、渋谷はどうやって行くのですか?」 このような質問を今日は7回された。これまでの人生において、自分は人から道を聞かれるようなタイプではなかったというのに。腰まで垂らした長髪と、根っからの風呂嫌いなことから起こる体臭により、たいて…

汗のくせして濡れすぎ!

私は、汗というものはもっとあっさりしたものであっていいと思っている。言うならば、テーブルの上に飛んだお酢のような、電車の中でくしゃみした女の子の飛沫する鼻水のような。おしゃべりに興じていると出たのか出てないのかもわからないような、そんな些…

明日からねこまる

今朝、通りを歩いていると、見知らぬ初老の男から突然呼び止められ、「君は明日からねこまるだ」と言われた。私は意味がわからないから「意味がわからない」と言った。しかし男は頑として意見をぶらさずに「ねこまると言ったらねこまるだ」と言った。 私の欠…

肩こりはゲームだ

社内の代表選考会に出向くと、そこには見るからに肩がガチガチに凝ってそうなツワモノたちが集まっていた。しかし、この私もここ2週間満足に寝ていないし、姿勢も悪いほうに矯正してきた。この日のためにさんざん凝らせてきたのだから負ける気はしない。 総…

サは鎖国のサ

今日また外国人に媚びを売っている日本人を見た。不愉快で歯ぎしりし、「おい、ここは日本だぞ!」と怒鳴って空き缶でも投げつけてやろうかと思ったくらいだ。ああいう無責任な日本人は日本人であることの誇りを忘れてしまっているし、見ていて哀れになって…

まんまるなでしこ

やせすぎ女性が急増とされた時代も今ははるか昔、2022年を境に日本人女性の体型はかつてないほどに太り始めた。原因はいろいろあるとされるが、当時日本人女性の2人に1人が好きであると言われた男性アイドルの児嶋正春、略してコジマサがぽっちゃり女性が好…

よかった貴代

「今日はよかった貴代と悪かった貴代を発表します。よかった貴代は小島さん、青木さん、西本さん。悪かった貴代は那須野さんと拝島さんです。悪かった貴代は明日までにレポートと反省文を提出してもらいます。よかった貴代には親子丼を用意していますので、…

かまぼこを愛するアツシ君のブログ

2月11日(金) 今朝サミットで買ったかまぼこは歯ごたえがイマイチだったから、サミットに抗議の電話をしてみた。サミットは申し訳ありませんと謝っていたが、商品の品質に関してはメーカーに聞いてくれと言うので、近藤食品に電話してみる。近藤食品の応対…

ミランダの嘔吐とキッス

イギリスの片田舎に住むミランダは、世の中すべての事柄にほとほと辟易していた。ミランダは過去にロンドンでモデルとしてデビューし、DJをしたりCDを出したり女優としてドラマに出たりもするティーンからの憧れだった。しかしもともと根っからのひねくれ者…

あきらめ猿

猿が猿であることをあきらめたらこうなる。 静岡県の山奥に暮らす猿の、――仮に名前をギャバとしよう――ギャバは突然猿であることをバカバカしく感じるようになった。木を上ってキヒキヒ騒ぐのにも、果物が美味しいと思うのにも、他の猿の毛づくろいするのも、…

俺は携帯で人を判断する

たとえば、電車の中でものすごくいい女を連れているイケメン君がいるとする。頭からつま先までオシャレに決めていて、非の打ち所がない。周りにいる男たちは、彼のことを憧れの眼差しで見つめているが、俺は違う。俺は奴の携帯を見るまでは、判断することは…

がんばれ粘膜

『がんばれ粘膜』というアニメが子供や大人を巻き込んで大流行している。これに似たタイトルの『がんばれ元気』は堀口元気を主人公としたボクシング漫画だったが、『がんばれ粘膜』の主人公は人間ではなく、粘膜そのものである。ストーリーは、アラサーOLの…

水の恨み

ナカノのローク・カトウはスギナミのカッツ・エンドウを確実に仕留めるために電子プラグをよく磨いた。エンドウはカトウとの先日の取引で50リットルの天然水を支払っていたが、これが天然水ではなく人口水と判明。カトウはエンドウにテレパプで抗議を告げた…

シャンプーの残り香

岡山駅から鈍行に乗ってやってきた広島駅で、商店街をあてもなくブラブラと歩いていると、アツシの鼻は突然覚醒した。鼻の穴は全開に開き、鼻毛の一本一本がイソギンチャクのように波打ちながら、その匂いを逃してなるかと暴れまくり、鼻と脳をつなぐ嗅覚の…

見てないから

高校2年生の頃、同じクラスの本間が2学期の初めからおかしなことを触れ回るようになった。授業中や休み時間に、私が本間のことを盗み見ているというのだ。ゴシップ好きのクラスメイトはこれに飛びつき、あっというまに私が本間のことを好きだという話になっ…

炎の貧乏性

3日3晩、不眠不休で探し歩いた甲斐があった。トマト缶が1個25円という破格の値段で売られているのを見つけて、22個を買い込む。これで来週はトマトスープを好きなだけ腹いっぱい食べることができる。隆司はその場で膝をつき、血ヘドを吐いた。ここまでし…

ひらがなが好まれる時代

今は、ひらがなが好まれる時代と呼ばれている。昔は漢字を多く知っている男性がモテた。ある文献に残っている記録によると、今から数百年前、年に一度の漢字検定の大会が行われると、女性たちが一張羅を着飾って殺到したという。当時は漢字を多く知っている…

えん君とこう君

遠(えん)と高(こう)が出会ったのは小学生3年の頃だった。2人は同じクラスになり、お互いの名前が簡潔で珍しいこともあって意気投合した。遠の親は「遠くまで行けるように」という願いを込めて命名。高の親は「高くまで行けるように」という願いを込めた…