発送便分離への道

改革派官僚として知られる吉野銀二がテレビで語っている姿を見て、小学3年生の元田公司は深く感銘を受けた。吉野が語ったところによると、日本の送便線はひとつの便力会社が独占しており、これが便気代を引き上げ、他社の参入を阻んでいるというのだ。公司は…

脱・アンチ洋楽体験記

私はアンチ洋楽なのにフジロックに毎年欠かさず行くという非常に稀有な存在だ。これまで同じような行動を取っている人は見たことがない。なぜこんなことになったのかというと、何年か前に友人に無理やり誘われてフジロックに来たことがきっかけだった。確か…

機動戦士ガン

スポンサー企業からの「強い日本を象徴するためにも“簡単に敵に負けず”、少子化が進む日本というイメージを打破するためにも“異常な繁殖力がある”ヒーローを」という要望に応えて僕が作り出したヒーロー。ほんの冗談半分で企画書を書いたのに、それが世界中…

あの蚊力発電所事故がもたらしたもの

この50年間、発電に関する議論は1回りも2回りもし、やはり蚊力発電がコスト的にも安全的にも優れているだろうというところに落ち着いていた矢先、あの事故は起きた。蚊力発電は地震にも津波にも強く、しかもたとえ事故が起こっても、放射性物質のような危…

俺は日本人だ! 文句あるか!

高校2年生の菊沢康二が裏山を散歩していると、ボロボロになった1冊の本を見つけた。『未来の日本人へ』というタイトルのその本を読み始めると、いきなり驚くべき事実が飛び込んできた。2067年現在の日本の人口は3000人であるが、なんとその昔は1億2千万人も…

徳永くんの杜撰なおもちゃ管理

僕のいる保育園は変わった政策をとることで知られている。自分の家にあるおもちゃは全て保育園に持っていかなくてはならず、その管理を園児たちで代わりばんこで日替わり担当するのだ。つまり、担当となった園児は、自宅におもちゃを持ち帰り、それを一晩管…

大企業礼拝法

先月、大企業礼拝法案が可決されたことで国内は紛糾している。この法案を一言で言うならば、日本国内において経済は宗教であり、それらを牛耳る大企業が神様であるという理由から、毎日1日3回の礼拝を欠かさないようにしようというものだった。これにより…

イプセンの『人形の家』

自分の意志で、あるものを目の中に入れないように努力をするのは至難の業だ。それはいつも急激に、不意を突いて飛び込んでくる。今年で30歳を迎える鹿島雅彦はそれをいやというほど味わっていた。 雅彦が本屋に行くと、岩波文庫のエリアの前は絶対に通らない…

あるわけないだろ!(Say it louder)

うちのお父さんは大手マスコミの幹部で、政治や経済の世界にも顔が利く、いわゆる権力者である。僕はお父さんのことを心からリスペクトしている。 お父さんの口癖は「あるわけないだろ!」とひときわ大きな声で言うことだ。お父さんのような迫力のある容姿の…

君は100円ショップを信じるか?

私はこれを読んでいる者たちに問いたい。最近よくテレビや新聞などで見かける100円ショップというものがあるだろう。あれが実在すると思っている者が本当にいるのか? おいおい、ちょっと待ってくれ。実在すると思っている人たちはほんのわずかだと信じたい…

えくぼのねむけ

エクボがある人のほうが眠気が強いというデータが科学者からあがってきたので、私は自分の権限を使い、それを揉み消した。もしこのデータが公表されたら、エクボがある人が眠る場所を確保しろと暴動を起こし、パニックとなることは確実だからだ。科学者は不…

シャキッと震災

私が子供の頃、祖母は地面に向かって「シャキッとしんさい!」と語りかけ、バンバンと地べたを叩くということを毎朝続けていた。祖母に理由を聞くと、「こうすると、地盤が固くなって、シャキッとしてくれるんじゃ」ということだった。私は子供ながらに、地…

1回しか言わないよ

小さい頃にチョコレートのCMか何かで使われていた言葉をなぜかカッコイイ!と思ってしまった僕は、それ以来何か一言発するたびにその言葉を言わないと何も言えないようになってしまった。 僕にとってその言葉は魔法の呪文であり、天使のさえずりであり、賢者…

お菓子と毛布

『お菓子と毛布』の第7号を買ってきた。 『お菓子と毛布』はおそらく『音楽と人』からインスパイアされたと思われる雑誌で、人間が苦悩する時期にすがりつくのが、お菓子と毛布であるということから創刊された雑誌のようだ。クラスの女子たちがやたらとこの…

週刊誌を拾う

私が週刊誌を拾うようになったのは、1995年の2月からだ。あの年の冬は個人的に混乱した状況で、仕事にも恋愛にも身が入らなかった。そんなときに私の家の隣に引っ越してきたのが、カズオさんだった。カズオさんは100人に聞いたら100人が知っていると答えるよ…

キャーまだ

中学生の頃に同じクラスに生息していた保田雅恵は、中学生らしからぬビッグマウスを叩くことで有名だった。保田は中学1年生のときに、インドを一人旅すると言い出し、全校生徒からの羨望の眼差しを受けるようになった。保田は給食の時間に各クラスを回り、「…

わたくしのささやかな栄光(やや自慢)

本日はこのような講演会の機会を設けていただき誠にありがとうございます。あ、拍手もいただきありがとうございます。小西です。わたくしはしがない一市民ではありますが、わたくしのやったことは決して小さくなかったのではないかと今では自負しております。…

犬は肩を撃ったろう?

時計の針が夜をさして、私はこの町でもっとも力があると言われている政治家のSさん宅を訪ねる。Sさんは私の顔を見るやいなや、「遅いぞ」と一言だけつぶやき、奥へと消えていった。私はその後を追い、ひんやりとした空気の部屋の真ん中にあるテーブルに座る…

敬語を徹底しよう

こんなときだからこそ、こんなときだからこそ。呪文のように校長先生が繰り返す。敬語で喋ることを徹底しましょう。生徒たちはそれを聞いて、またかよ、と言ったようにうんざりとした表情を浮かべる。俺たちが暮らすこの地域は、敬語を使うという感覚が全く…

ムサボリン警戒

私は、皆に、警告する。今すぐムサボリン警戒をやめなさい。ムサボリン警戒は自分の人生を滅ぼすだけであるからして、つまりそれは有害なのである。 ムサボリン警戒は5年前くらいから流行った思想形態であり、今はその名前を知る人はいない。ジャーナリスト…

みんな疲れる

モーモー幼稚園で「正しい疲れ方」の講義を行っている三原真司に対する父兄からのクレームはとどまることを知らない。三原はモーモー幼稚園の片桐園長の同級生であることを理由に、同幼稚園で講義をすることを許された。そもそも三原の表向きの職業は、疲れ…

あなたのいいとこ見つけます

長野県の佐久市に住む牧田幸作は、昔から聞き上手でフォロー上手と言われ、やたらと人が集まってくることで有名だった。幸作と話していると、みんな自信が増すというのだ。幸作はそれらの意見を真に受け、地元で『あなたのいいとこ見つけます』という名前の…

お天気クレーマー

本日の最高気温は10度、最低気温は2度。夜の12時を過ぎて日付が回ったので、前の日の気温をノートにメモする。天気予報との気温差はそれぞれ2度ずつだ。 丸谷の日課は、その日その日の最高気温と最低気温を書き記すことだった。これを各テレビ局が放送してい…

モールス息子

宮城県にある小さな町に住む青山司郎の息子・健太は、大学卒業後に「モールス信号のような小説が書きたい」と言って家を出て行った。司郎はそれ以来、毎晩のように晩酌のビールをあおりながら妻の杉江に愚痴をこぼす。 「モールス信号のような、って一体どう…

モナ対リザの意外な結末

モナのキックがリザの耳たぶをかすめた。観客はため息を漏らし、一部の狂信的なリザファンたちが徹底的にモナへの罵詈雑言を強める。これはあくまで政治討論会で、プロレスではない。それなのに、モナは暴力という表現方法しか知らないため、こういった手段…

先生、脳がかゆいんです

前々からヨーコ先生には個別相談していた事柄だった。それは私の脳がかゆくてかゆくて仕方がないことだ。先生はおそらく成長期にありがちなことではないかと言って、様々な文献などを読んで対処法を調べてくれた。 そして今日、先生が連絡をとってくれた脳学…

20秒の森

そもそも、だ。森を時間で測ろうと言うことが間違っていると言いたい。担任教師のKは森と時間は密接に繋がりあっており、20秒で事足りると言って聞かない。私はこの旨を父親に話したところ、おかしな本を引っ張り出してきた。タイトルは『くしゃみ一族のカ…

こそばいからバイバイ

私がペットとして飼った5代目の蚊は私の欲求を満たさない。私は、蚊にはズブリと思い切り皮膚を刺してもらい、ちいっと舌打ちをしたくなるほどの痒みを与えてほしい。しかしこの5代目は蚊とは思えないほどのフェザータッチで皮膚を撫でるほどで、痒みも全…

西口は無表情

私の悩みは明るい性格で声が大きいことだった。とにかく何かあるにつけ、笑いが止まらなくなってしまい、仕事中にもゲラゲラと笑ってばかりいた。小さい頃は病気かと思って病院に行ったこともあった。しかし、医者はただ一言、「何の問題もありません。ただ…

あいさつ教室からの独り立ち

スケゾウがあいさつ教室に通うようになり、2年と3ヶ月が過ぎた。最初はあいさつ教室?と半信半疑だったものの、通いだしてみるとみるみるうちに成果があがり、昨年転職した先の会社ではハキハキと挨拶をするスケゾウ君というキャラ設定が同僚たちの間に浸透…